活動報告

現状と課題 7

開始後半年が経過した愛媛県拡大スクリーニングの現状

愛媛大学大学院医学系研究科 小児科学 講師

濱田 淳平 先生

 愛媛県では、ライソゾーム病(ポンペ病、ファブリー病、ゴーシェ病、ムコ多糖症I・II型)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)の7疾患を対象に2021年10月に拡大新生児スクリーニングを開始した。以後半年が経過したので、その現状や課題を報告する。

 我々は、愛媛県内分娩取扱施設と連携し、県内どの地域で出生しても、希望すれば検査を受けられる体制を整備した。検査は、拡大スクリーニング専用ろ紙を使用し、KMバイオロジクス社(熊本市)に委託した。要精密検査と判定された場合は、愛媛大学病院に紹介頂き、精査や遺伝カウンセリングを実施した。

 拡大新生児スクリーニング開始時(2021年10月)より、愛媛県内全ての分娩取扱施設(29施設)から検体が提出された。また、検査実施率(同意率)も82.6%と高率でのスタートとなり、2022年3月には91.2%に到達した。2022年5月半ばまでの検査実施数は4,413件で、要精密検査判定となったのは、ムコ多糖症II型が3件と最多で、ポンペ病、SMA、SCIDが各1件ずつであった。

 愛媛県における拡大スクリーニングの課題としては、従来の公費検査の検査機関と異なるため、専用ろ紙への採血が必要であることであり、今後県とも協議を行い、ろ紙の共有などについて検討していくことが重要といえる。

 愛媛県で開始した拡大新生児スクリーニングは検査実施率(同意率)が高率で推移しており、有料検査ではあるものの、保護者の高い関心度が示唆された。県内の全ての地域を対象に行う拡大スクリーニングとしては、中国四国地方で先行した実施であり、今後更なる体制整備により実績を増やし、拡大スクリーニングの有用性を示すことが責務である。

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