活動報告

現状と課題 4

大阪市における拡大新生児スクリーニング

大阪公立大学大学院医学研究科 発達小児医学 教授

濱崎 考史 先生

 【背景】大阪府全体の年間出生数は約6万人、そのうち大阪市内の出生数は約2万人である。公的スクリーニング検査は行政からの委託事業として、大阪市出生者は、一般財団法人大阪市環境保健協会で実施し、それ以外の地域は大阪母子医療センター臨床検査科にて実施している。2019年末から大阪市立大学、大阪大学、大阪母子医療センター、大阪府、大阪市の関係部署と連携し勉強会を立ち上げ拡大新生児スクリーニングに関する検討を開始した。2020年10月からロタワクチンが定期接種となることを重要視し、まずは重症複合免疫不全症(SCID)を2020年夏までに実施できる体制を整えた。大阪市環境保健協会が各分娩施設と個別に有償検査として契約し事業として実施している。2021年秋からは、脊髄性筋萎縮症(SMA)を追加した。【検査実績】開始から2022年3月末までの検査実績は、SCIDが6,216件実施し、再採血36件(0.6%)、要精査5件(0.08%)、SMAは、1,082件実施し、再採血0件、要精査0件だった。SCIDの要精査例の中には生ワクチンの実施を遅らせるなどの対応をおこなった例もあったが、いずれも経過中自然に回復し対象疾患ではなかった。【課題】契約している分娩施設が大阪市内20〜30%程度にとどまっており、同意取得率にも分娩施設間で差が大きく、大阪市全出生数に対し約25%の児が検査を受けているに留まっている。産科、助産師、行政、市民への周知・啓蒙活動を模索中である。【これからの取り組み】2022年4月からは、ライソゾーム病(ポンペ病,ムコ多糖症Ⅰ,Ⅱ,Ⅳa,Ⅵ,Ⅶ,ファブリ病)を追加し実施している。ファブリ病については、治療がすぐには必要ない事、家族内で病気が発見されることを説明し、検査を受けない選択肢も用意して開始している。

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