活動報告

現状と課題 2

栃木県の状況について

自治医科大学小児科学 教授

小坂 仁 先生

 栃木県は、人口192万人で年間出生数はおよそ1.1万人(R2年度)である。我々は、2017年より先行研究として、学内で芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素欠損症に対するスクリーニング(渡邉知佳ら、日本マス学会誌2021)に組み合わせる形で、西尾らの脊髄性筋萎縮症(SMA)へのマススクリーニング研究に参加していた (Wijaya et al., Int J Neonatal Screen. 2019)。今回の拡大スクリーニングでは、SMAおよび原発性免疫不全症に対して、現行新生児スクリーニング乾燥ろ紙血の残余検体を用いて、1年間(R4.3.31~R5.4.1)の研究として学内の倫理委員会承認を受けるとともに、栃木県産婦人科学会、小児科学会栃木県地方会で研究内容を説明し、協力の依頼を行った。また、県からは残余検体提供の承認を受け、日本小児先進治療協議会からの支援金を受け(機器・試薬、人件費および初年度費用分)、DNA抽出から、EONIS-SCID―SMA kitを用いたReal-Time PCRの系を整備した。県内のすべての産科施設での協力を得て、栃木県保健衛生事業団での解析を開始した。2022年5月23日に最初のSMA陽性例が確認され、自治医科大学小児科・獨協医科大学小児科・済生会宇都宮病院小児科でメール審議が行われ、当日に患者が受診し、確定のための遺伝子検査等が行われた。SMN1の欠失が確認され(SMN2は3コピー)、AAV-9抗体が陽性であったため、6月2日にスピンラザによる治療が行われた。来年度以降の検査費用についても、県からの費用援助をいただけるように働きかけている。

活動報告一覧へ戻る▶