活動報告

現状と課題 5

大阪母子医療センターにおける
拡大スクリーニングの取り組みについて
〜SMA-NBS陽性例を中心に〜

大阪母子医療センター 小児神経科 医長

木水 友一 先生

 大阪母子医療センターの拡大新生児マススクリーニング(NBS)事業は、2020年8月より開始され、重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)が対象疾患である。2022年4月時点で約4万5千検体をスクリーニングしており、担当地域内の全出生数(約4万出生/年)あたりの受検率は74%である。

 2022年3月にSMAの陽性例が確認された。症例は、在胎39週1日、出生体重2,414gで出生、周産期異常なし。日齢5に拡大NBS用DBSが採取され、日齢8に当センターで検体を受付し、日齢12にSMA-NBS陽性が判明した。同日中に施設内担当者から電話にて両親に陽性通知を行い、日齢14に当センター初診となった。初診時遺伝カウンセリングを実施し、同意の上SMA遺伝子検査を実施した。日齢19にSMN1;欠失とSMN2;3コピーを認めSMAと確定診断した。日齢20に当センター入院し診察と電気生理学的検査で異常を認めず未発症と判断した。同日中に両親に治療方針を説明し同意を得た上で日齢21に核酸医薬のnusinerusenを投与し、日齢29に遺伝子治療薬のOnasemnogene abeparvovecを投与した。同意取得後も投与までの準備期間中に遺伝子治療の意思決定の確認を複数回行った。治療に伴う大きな有害事象を認めず日齢42に退院した。その後も順調に経過している。

 大阪母子医療センターの拡大NBSは順調に稼働している。SMA-NBSの課題は、さらに迅速な陽性者への対応と、その後のより有効な治療・フォローアップシステムの構築である。

活動報告一覧へ戻る▶