活動報告

現状と課題 3

千葉県における拡大新生児スクリーニング

ちば県民保健予防財団 調査研究センター長

羽田 明 先生

 千葉県では2020年5月から脊髄性筋萎縮症(SMA)の全県を対象とした実装研究を実施した。その準備として①千葉県産婦人科医会の賛同を得る、②千葉県、千葉市から既存の新生児スクリーニングろ紙使用の許諾を得る、③研究参加施設の研究倫理審査委員会の承認を得る、④解析機関及び解析手法の決定をする、⑤検体調整から報告までのプロトコールを作成するなどを行った。その結果、2020年度は31,085件(既存スクリーニング数の82.6%)の検査を特に大きな問題もなく実施、結果を報告する事ができた。その成果を基盤として、2021年4月から有料のオプションとして希望者に検査を提供してきた。有料事業としての実績は15,679件(同40.4%)であった。2021年度中に重症複合型免疫不全(SCID)などの原発性免疫不全症のスクリーニングであるKREC/TREC検査を追加するための準備をおこない、2022年4月から2疾患を対象としたスクリーニングとしている。SMAスクリーニングの陽性例への対応は千葉県こども病院で診断・治療等の実績があるが、SCID等の陽性例では千葉大学附属病院小児科が引き受け窓口となることに承諾を得た。SMAの陽性例はまだ検出されていないが、KRECのコピー数がカットオフ値よりも低い例がこれまでに1例、検出されている。結果として、母親のクローン病治療に用いられていたプリンアナログの影響であることがわかり、現在、フォローされている。熊本県で検査の公費助成が得られたことを追い風として、今後、公費助成を得るための働きかけを多くの関係者と連携して多方面から行っていきたい。現在、関東圏の予防医学協会系の関係者とウェブ会議で連携を強め、拡大スクリーニングの全域での実現を目指している。

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