活動報告

現状と課題 6

兵庫県における拡大新生児スクリーニングの現状

神戸大学大学院医学研究科 小児科学分野 特命教授

粟野 宏之 先生

 兵庫県では、神戸大学、兵庫医科大学など県下17施設が参加する拡大新生児スクリーニング研究を実施している。研究への同意を新生児の保護者より得て実施する有料のスクリーニング検査を提供している。対象疾患は脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)、ポンぺ病、ゴーシェ病、ファブリー病、ムコ多糖症(MPS)1型・2型の7つである。2021年2月1日から開始し、2022年3月31日までに5580件の検査を行った。この期間に精査機関へ紹介となった例は、SMAで8例、SCIDで11例、ポンぺ病で7例、ゴーシェ病で25例、ファブリー病で1例、ムコ多糖症(MPS)1型で12例、MPS2型で8例であった。その中からSMA1型が1例発見された。症例は41週、3,266gで出生した女児。胎便吸引症候群のため入院していたが、日齢11頃より筋緊張低下に気が付かれていた。日齢21にスクリーニング検査陽性の報告があり、同日、精査機関に転院となった。転院時、筋緊張低下、シーソー呼吸を認めた。日齢23にSMN1遺伝子のホモ接合性欠失が同定され、臨床症状と合わせてSMA1型と確定診断された。日齢25にヌシネルセン治療が開始された。

 本研究からSMA患者が発見され、早期治療を行うことができたことは、拡大新生児スクリーニングの有用性が示されたと考えた。

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