活動報告

結論

 本研究会では、九州地区をはじめとして、全国の新生児スクリーニングに関わる医療関係者、検査センターや行政の関係者がWeb上に集まり、臨床、研究に関わる発表と討論を行った。拡大スクリーニングの課題の一つとして、陽性例のフォローアップ(精密検査・治療体制の整備)が挙げられた。

 熊本県では日本で初めての拡大新生児スクリーニングにおいて発見されたSMAの乳児が診断され、早期治療を受けて良好な経過である。全国でもすでに数例のSMA患者が拡大スクリーニングで発見され、その課題も見つかってきた。それには、推奨されている採血期間のうち最も早い日齢4で採血すること、早期にSMN遺伝子コピー数が判明する方法を導入すること、オナセムノゲンアベパルボベク(遺伝子治療薬)の投与前に、比較的早期に投与可能なヌシネルセンナトリウムを先行投与することなどが含まれる。

 各地域からの報告として、宮城県ではTRECでCHARGE症候群1例と22q11欠失症候群1例、SMA1例が確定診断された。SMA症例は出生前診断され、NBSでも確認された症例であり、速やかに治療介入となった。栃木県では、2022年5月に最初のSMA陽性例が確認され、報告当日に患者が受診し、確定のための遺伝子検査等が行われた。SMN1の欠失が確認され、スピンラザによる治療が行われた。千葉県では、SMAスクリーニングの陽性例は千葉県こども病院、SCID等の陽性例では千葉大学附属病院小児科が引き受け窓口となっている。KRECのコピー数がカットオフ値よりも低い例がこれまでに1例検出されている。

 大阪市では、契約分娩施数の拡大や、同意取得率に課題があるとされ、産科、助産師、行政、市民への周知・啓発活動を模索中である。大阪府では、2022年3月にSMAの陽性例が確認された。日齢14に初診となり遺伝カウンセリングを実施し、SMA遺伝子検査にて日齢19にSMAと確定診断した。日齢21にヌシネルセンを投与し、その後にオナセムノゲンアベパルボベクが投与された。兵庫県では、SMA1型が1例発見された。日齢21にスクリーニング検査陽性の報告があり、精査機関受診時、筋緊張低下、シーソー呼吸を認めた。日齢23にSMA1型と確定診断された。日齢25にヌシネルセン治療が開始されている。

 愛媛県で開始した拡大新生児スクリーニングは検査実施率(同意率)が高率で推移しており、保護者の高い関心度が示唆された。体制整備により実績を増やし、拡大スクリーニングの有用性を示すことが責務である。宮崎県の拡大スクリーニングの課題として、遺伝カウンセリング体制の充実、有料拡大スクリーニングの受検率(施設参加率)向上、尿中ウロン酸分析検査の検体採取と費用、有料拡大スクリーニングの公費負担、対象疾患拡大などがあげられた。

 総合討論において、治療までの期間の短縮、両親の意思決定、体制づくり、公費助成について討議が行われた。ひとつひとつのケースをこれからも共有しながら、全国の新生児スクリーニングのさらなる発展を目指すこととした。

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